La Finestra Vol.21
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ガラス張りの大開口で 外の空気を感じる空間に「外と内がつながったような住空間をつくりたかったんです」 そう語る建築家の堀内雪さんと夫の貴和さんが、東京の多摩川沿いに自宅兼アトリエを設けたのは4年ほど前のこと。「風が抜け、光があふれ、緑を感じる住宅」づくりを旨とする2人。南側を川が流れ、河川敷の緑を望む立地を考慮して設計した住まいは、開口を大きく取り、恵まれた自然を存分に生かしたつくりが特徴です。 象徴的なのが、玄関を入ってすぐのダイニング兼ミーティングルーム。玄関ホールは設けず、通り沿いの壁面をガラス張りの大開口にしました。土手の緑が目前に迫り、外とつながるような開放的な室内空間になっています。アンティークのテーブルにモダンテイストやインダストリアル系のチェアを合わせ、ルイスポールセンの照明を下げた空間は、モルタルの床も相まってカフェのよう。「私はモダンなデザインや植物が好きで、犀さん(貴和さん)はアンティーク好き。異なる2人の好みを一緒に取り入れたミックス空間をつくっています」。そう語る雪さんがデザインした鉄骨造の建物は、シンプルモダンなデザインがベース。大開口で外の空気を取り込みながら、内装にさまざまな種類の自然素材を取り入れて、モダンとナチュラルがミックスされた心地よい空間が生まれています。中庭を設けて開口を増やし 自然素材を使い分ける 多くの開口をつくるのに役立っているのが、コの字型の家の中心部にある中庭です。建物の面の数を増やした分、開口も潤沢に。そのため、家のどの場所でも自然光や外の空気が感じられます。 階ごとに異なる木材を使用しているのも興味深い点。1階のキッチンや階段の床はウォールナット、2階リビングの床はオーク、3階の寝室はアッシュと、上階に向かって明るい色を採用しています。「建築の実験的な意味合いもあるけれど、場所によって気分を変えたくて」(雪さん)。デザインのベースは同じでも、材の表情の違いで場所ごとに少しずつ印象が異なります。全体が緩やかにつながった空間を、程よくゾーニングする役割も担っています。 恵まれた自然環境を余すことなく生かした建築とインテリア。心身ともに健やかになれそうです。Profile4堀内邸光と風が通り抜ける大開口の家CASE_1上/ダイニングの奥に位置するキッチンは、コーヒーが趣味だという貴和さんの領域。ウォールナットと鉄の素材感を生かしたインダストリアルテイストで統一しています。重量感のある古材を渡したカウンターが目を引きます。 下/キッチンカウンターから中庭を望む間取り。料理中も四季を通して庭木の緑が楽しめます。中庭は通風にも便利だそう。堀内雪/貴和(犀) Yuki & Takakazu HoriuchiスタジオCY (スタジオサイ)一級建築士事務所主宰。設計は建築家の雪さんが行い、元編集者の貴和さんが事務所業務を担当。「風が抜け、光があふれ、緑を感じる住宅」を信条に、多くの住宅の設計を手がける。

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