La Finestra Vol.25
20/24

名商業施設のウインドウディスプレイや話題のフラワーショップの内装など空間デザイナーとして活躍する外山翔さんには、アーティストとしての顔もあります。「デザインの専門学校で家具づくりを学び、卒業後は設計事務所などで働きました。その後、空間デザイナーとして独立しましたが、これは商品を引き立てるための仕事。それとは別に純粋に自分が好きなものをつくりたいと思い、作品づくりを始めました」 外山さんが最初に制作したのが、アンティークの香水瓶やパーツをアクリルの中に閉じ込めたオブジェ。これが評判を呼びます。「でも、『アクリルオブジェの作家』になるつもりはなかったんです。アクリルの作品を棚に並べたときに『横に何があるといいかな?』と考えて出た答えが、もともと好きだった大理石。そこで大理石を使った作品をつくりました。さらに自分で大理石の模様をつくろうと始めたのが、水溶性樹脂でマーブル模様を描いた一輪挿し『MINE ORE(マイン・オーレ)』です」 ディスプレイの仕事の影響もあり「飾ったときにどう見えるか」を重視していると言います。「たとえば誰か身近な人を思い浮かべて、その人が過ごす部屋に置いてありそうなテイストでつくるなど、飾られるシーンを意識します」。 マイン・オーレもシャネルのアクリル作品(左上写真)と並べられるようサイズをそろえたり、飾るときに植物が入っているといいなと思って一輪挿しにしたりと、そのデザインに至った発想がユニークです。「素材に特別なこだわりはないんです。今はアクリルと樹脂と石だけど、来年はもしかしたらまったく別の素材を使っているかも」と外山さん。インテリアショップ以外の場所でのイベントも模索中ということで、これから「ちょっといい空間」に外山さんの作品が飾られているシーンが多く見られるかもしれません。20有そとやま・しょう 2012年maticとして独立。空間デザインをベースに店舗設計や展示会などイベントの会場構成、ディスプレイデザインを手がける。また自身のアート活動をAtelier maticとし、主に大理石やアクリルを用いたオブジェや家具などの制作を精力的に行っている。https://matic.jp.net/撮影:小林久井骨董市などで手に入れたという古いシャネルの香水瓶を、アクリルの中に閉じ込めたオブジェ。アクリルが固まる際の圧力で瓶が割れ、染み出した香水のアルコール成分が反応してアクリル内部に爆発したようなヒビをつくっています。「ヒビは予期していなかった偶然の産物ですが、面白い効果を生んでくれました」と外山さん。アクリルのサイズは元の香水の箱にそろえているそう。本家のパッケージと並べて飾っても素敵です。オニキスの原石をそのまま用いて照明に仕立てた「Stone light」。美しい層を持つゴツゴツとした岩と、そこからニョキッと突き出た電球やコードとのコントラストが楽しい。部屋の床や棚に置いたり、外山さんの他の作品とともにコーディネートしたくなる一品です。静と動が閉じ込められたアクリルオブジェ石から電球とコード!?異素材の組み合わせの妙

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る